「おぅ、(ががめ)ちゃんじゃない？」

バイトの帰りに寄ったスーパーで、偶然
大学時代のバイト先の掃除のオジサン(お兄さん？)と再開した。
3、4年振りだろうか。
今でもまだ当時のファーストフード店のあの時間帯で掃除のバイトをしているらしい。
フリーターで、今年で37になるそうだ。
過去にはデリヘルの女の子の送迎だったり、ヒモだったり、
数々の死線を掻い潜って来た経験を持ち、
当時は仕事が終わってから、よく朝方まで自分の知らない世界の話をしてくれた。
例えるなら、カイジとかウシジマくんとか、天体戦士サンレッドなんかの
世界観に登場してきそうな感じの人である。

「いやー、いつも喰ってる納豆が無くてさぁー
　その辺は俺、こだわってるんだよー
　ま、味なんてわかんないんだけどっｗ」

社会的に見れば、仕事も手抜きばかりだし、
震災で死んだ自分の親戚も笑い話にしてしまうような
パチンコ好きのチャランポランなのかもしれないが、
時事問題から政治や法律、生物などなど、知識は広く、
それに対してしっかりとした自分の考えをもっていて、
かつ自分の身の丈を弁えている、年齢を感じさせない気さくな人である。
スーパーが閉店してからも、寒い中店の前で1時間半も立ち話をした。

「(ががめ)ちゃんいなくなってから店が汚くてさぁー」

いや、掃除はあなたの仕事でしょうがｗ
当時のファーストフード店を辞めてからも、
何度かその店に顔を出す機会はあったが、
自分が辞めてから店が汚くなったと、よく言われる。
自分は当時、主に20時以降の厨房とフロアメンテナンス(掃除)を行っていた。
仕事に関しては、元々凝り性な性格の上に、
芸術家で柔道家の師匠からミッチリしこまれたものなので、
昇級こそ遅かったが、少なくとも清掃専門で入っていた誰かさんよりは
キレイにしていた自信がある。ｗ

ただ、今店が汚くなっているということは、
自分はそれを引き継がせることができなかったということである。
一応、何人かの後輩は指導していたし、
口下手だったので、店を辞めるときにも自分の時間帯の
仕事の仕方やコツをまとめたノート(似顔絵入り)まで作ってはいたのだが･･･。


7月まで働いていたアニメ会社の元同期からも、
今年入社した男子が全滅したという話を聞いた。
今年の新人は去年と違って、研修明けからガンガン徹夜していたから･･･。
それでも、もう辞めてしまった自分が言うのもアレだけど、
せめて1年は頑張ってほしかった。
城端の雪は見てほしかった。
「人生で一番ツライ時間にしろ」なんて言われて、
泣きながら、歩けないくらい足を腫らして、
でも、そんな
栄養ドリンクを握ったまま会社のソファーで朝を迎えていた先輩の姿は
後輩の目にはどう映っていたのだろうかと後悔している。
たしかに、自分のことでいっぱいいっぱいだったかもしれないが、
どうして自分は、もっと先輩らしいことが出来なかったんだろうか。

自分はきっと、何も残せていない。
今でもきっと何も伝えられていないままなんだと思う。

絵を描いたり創作するということは、何かを伝えるということ。

いままでいろんな人達と会ってきた。
いろんな人に迷惑を掛けて、いろんな人にお世話になった。
お金も才能も無いけれど、出会った人の分だけ
自分の人生はそれなりに素晴らしいものだと思うし、
きっと誰の人生だってそういうものなんだと思う。

だから、いつかそれを伝えたい。
たとえチープな作品ばかりしか作れなかったとしても、
その素晴らしさは誰かに伝えなければ。
残していかなければ。

どんな形になるかはわからない。
アニメーションになるのか、漫画や小説になるのか、
それとも歌？、自作のゲームなんかもいいかもしれない。
いつの日か自分の歩んできた人生を形にしたような、
今までの出会いをぎゅっと凝縮したような
そんな何かを作ってみたいと思う。

とりあえず、そこら辺が今の人生の目標かな。
それさえ作ることができれば、ががめの人生は100点満点です。

長々と失礼いたしました。